《特別寄稿F》

  「脱退するについての考察」

 エホバの証人を辞めることに多くの人たちは決死の覚悟をする。中には精神的にもずいぶんボロボロになってしま
い何年もの間苦しむ人もいるようだ。「簡単に辞められない」「辞めさせてもらえない」のがエホバの証人に限らず新
興宗教の特徴でもあるのだが、まず憲法第二十条に「宗教を信じたり、信じない自由や、その信仰を変える自由は、
誰に対しても保障される。……誰でも宗教上の祈祷、礼拝、祝祭、儀式、行事などに参加するように強制されること
はない」という条文がある。

 わかりきったことだが、どんな宗教でも信じるのは自由だが、逆に、信じない自由も認め、さらに宗教行事等の参加
も強制してはならないと、わが国の憲法でははっきりと定めている。
だから、もし、信じていたエホバの証人の教えを何らかの理由で信じられなくなったり、冷めてしまったり、これ以上信
仰生活が維持できなくなってしまったりした場合や中には信者獲得のための奉仕活動ばかりやらされて体を壊したと
か、寄付ばかり強要されてイヤになったとか、ドロドロした人間関係に深く傷ついたなどの原因もあるだろうが、どん
な理由にせよ、「辞めたい」と思ったら、即刻、辞めていいのである。心を傷ついたまま続けたり、不信感や疑問を持
ちながらも、だらだらと付き合っていても、精神上もよくないし、第一、貴重な人生の時間と金を浪費するだけだからで
ある。

 しかし、エホバの証人の場合「もう辞めた」と言って活動をしなくなると「断絶」扱いされかねない。これはこちらのサ
イトにも詳しく説明されているが、以前の信者仲間と道で出会っても一切無視されるといういわば非人道的な扱いを
されることも意味している。これは人道上も大きな問題のある教理の一つである。

 入信の時は伝道者の発表やバブテスマの討議・「水没」という儀式などにより明確に信者になったことを表明するこ
とが出来るが、一旦入ってしまえば、「もうやめた」ということや、無難に宗旨替えすることはできない団体なのであ
る。つまり正式に辞める方法は、「排斥」になるか「断絶」するかしかないのである。したがって、辞めるにしても余計
なトラブルが発生したり、戸惑いが生じたり、多くの場合は心身ともに深く傷つけられて相当なダメージをこうむること
になるのである。

 だからエホバの証人であることを辞める場合には、このサイトの主要なテーマになっている「自然消滅」が最善の方
法であることは間違いない。ものみの塔側にすれば、この方法は認めておらず、協会サイドからすれば非合法な手段
であるが、そんなことはかまう必要はない。

 しかし、自然消滅を始めると辞めさせまいとして必ず長老達の訪問がある。これが実に厄介でしつこい。典型的な
例では、毎日様子を伺いに来る、無理やり奉仕報告の提出を求められる、世の終わりを生きて通過できない、滅ぼさ
れると脅される、実に様々な方法で強引に引き止められたり、嫌がらせのような仕打ちを受けることもしばしばある。
しかし脱会を強引に阻止したり、嫌がらせする等は、憲法二十条に照らせば、信教の自由や人権を無視した恥ずべ
き行為だ。もし、そうした被害が発生したら、宗教法人の監督官庁である文化庁宗務課や、人権擁護委員会へ相談
することもできるだろう。

私が知っているごく平均的な自然消滅の方法について紹介してみよう。
二年ほど前(正確には01,9月ころ)に活動を停止したAさんの場合。

 まず、群れの書籍研究を休みだす。それ以前に実家の母親の具合が悪くて時々世話をしに帰っていることを同じ群
れの成員達に何となく話しておく。そうすると群れの成員達は実家に帰っているのかと考える。次に神権宣教学校や
奉仕会の割り当てなどが当たっていれば、その日は割り当てを果たせないと前もって断っておく。そして徐々に神権
宣教学校や日曜日などの集会も休みだす。もちろんこの頃には野外奉仕にもほんの数時間の報告程度に抑えてお
く。こういう状態を半年ほど続けると、その間に長老や群れの司会者の訪問があるが、あくまで実家の母親の看護な
どで今はとても時間が取れないことや看護で疲れていることなどを前面に出しておく。
そのようにして半年から一年近くかけて集会にも奉仕にも全く参加しなくなり、現在に至っている。
 「排斥」や「断絶」したわけではないから、買い物などで知り合いのエホバの証人に出会っても、無視されたり避け
られることもなく、むしろ「姉妹ー、元気?」と声をかけられたりして無難な世間話をしたりもしている。
今ではまったく長老達の訪問もなく、集会や大会、また野外奉仕などに振り回されることなく、ゆったりとした自由な
生活を取り戻している。
Aさんは「辞めて初めてわかったことですが、世間の人達がエホバの証人のことをこれほど嫌っているとは思いませ
んでした。現役時代、私もオウム真理教や他の新興宗教を偽りの宗教とバカにしていましたが、世間の人はエホバ
の証人のことをオウムなどの宗教と同じ目で見ているんですね。」と話している。

 これがエホバの証人を辞める一つの方法であるが、そんな長い時間かけられないという人は、いきなり集会や奉仕
など活動を停止して、長老による訪問にも一切応じない、あるいは曖昧にそらしておくということもできる。
しかし気持ちのうえできっちりと決別したい人は、文書で、「脱退届け」を提出するのも一つの方法である。
もちろんこの場合は、「断絶」扱いとなり、あたかも犯罪人のように扱われることを覚悟しなければならない。

 ともあれ、「偽りの教え」により、生き方そのものを支配され、一宗教団体の組織拡大のために、奴隷のように扱わ
れて搾取されていると感じるようになった人は自然消滅なり断絶なりの方法で辞めることができるのである。そういう
意味で、そのような人たちをサポートするこのサイトの存在意義は大変大きいものであり、これからも多くの人のサポ
ートに期待している。


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